飛魚

中島裕翔くんのファンです

「40カラット」の感想

薮くんが出演している舞台「40カラット」を見ました。
やっぱり恋ってかっこわるい。感情がいつもより大きく振れてしまって、人格的に欠けているところが露になって、いびつになる。だけどそういう欠落、常識に覆われたつるつるの球でない尖りに光が反射して輝くところが宝石みたいだから、「40カラット」というタイトルがつけられているのかな、と思いました。


大地真央さん演じるリザが、薮くん演じるウィルに惹かれていくにつれどんどんかっこ悪くなっていくところがとってもキュートでたまりませんでした!
最初はお客さん、娘のアリスに母親のマーサ、元夫のヘンリーと、たくさん面倒みなくちゃいけない相手がいるのに自分の恋なんて!と、時間がないの一点張りで仕事に励むワーキングウーマンで、大きい契約もとれそうで、自分の見た目だって仕事にどう影響するかを一番に考えるようなお堅い40代女性なんですよ。
だけど物語が進むにつれ、甘えただし、自分の都合で相手を振り回すし、論理的に諭されて言い返せなくなったら強引に話を取りやめにしてしまうし、打算的なところとか、そういう欠点が浮かび上がっていくんですね。


アリスの結婚についてのシーンとか、ウィルの両親のご挨拶のシーンとか、リザの対応や発言に理解できないことが増えていって、プロポーズに応えてウィルと付き合いだしてからのはしゃいだ、若作りのファッションにも引いてしまい、うーんと思っていたところに、ウィルとリザの口論が始まりました。ウィルのよく行く有名なクラブから、リザの自宅へ帰ってきたところです。

「気にいらないと思ったんだ!なんであんなところに行きたがったのか理解できないよ!」
「理解できないのはこっちよ!あんなところ、行ってたのはあなたでしょ!」
「友達が集まる場所だったから!」
「友達!?あんなところでたむろしてる連中が友達?!」
「今はもうほとんど付き合ってないし、あの頃はやることがなくて暇だったんだよ!」
「この世のものとは思えないほどきれいなあの子と親しいの?」
「誰のことを言っているのかわからないよ!」
「そうね、みんな甲乙つけがたかったものね!わたしが言ってるのはあの子よ!ブロンドの長い髪をなびかせて踊り狂ってたあの子!」
「ベティのこと!?」
「知らないわよ!」
「いい子だよ、ろくに話したこともないけど」
「ろくに話したこともないのにあんなにベタベタするもの!?」
「酔っ払ってたんじゃないの!?」
「あの子と寝たことあるの?」
「ない!……………とは言えない」

この口論のあと一時的にリザの頭が冷えて、ウィルは自宅へ帰り、アリスとマーサがクリスマス旅行に出かけている家にリザが1人、残されます。と思ったところにリザの寝室からヘンリーが登場!マーサにつつじの世話を頼まれていたヘンリーが、ウィルとリザの予想外の帰宅に驚いて隠れていたのでした。
最近できたガールフレンド、6階のドイツ人の女の子のところへ行こうとするヘンリーをリザが強引にひきとめます。

「誕生日プレゼントだってまだもらってないんだぜ?」
「あっ!誕生日、いつだっけ?」
「2週間前だよ!」
「そうだった、私より7ヶ月お兄ちゃんだもんね」
「たいして変わらないけどな」
「てことは、7ヶ月後わたしも、年をとるのね……。ウィルは素晴らしい青年よ。優しくて、お金持ちで、思いやりに溢れている。…だから、不安になるのよ。わたしはシワを気にして鏡をずっと見ているような女にはなりたくないの!求めていたのは心の平穏だったのに。不安でたまらなくなるの……」

ここが〜!セリフがうろ覚えなのが悔しいくらいー!すごくよかったんですよー!!
「誰も優しくしてくれない」「誰がわたしに優しくしてくれるの!?」と、優しくしてくれるなら誰でもいいようなことを言っていたリザが!ヘンリーに「打算で結婚しようってわけだ」と指摘されていたリザが!ギリシャでのワンナイトの相手とニューヨークで再会してしまって困惑し、うとましがっていたリザが!
ウィルに恋してる!


ここのリザが本当に可愛らしくて、観劇後何度も反芻しました。大地さんは声がすごく甘くて、砂糖が紅茶に溶けるみたいに、語尾が空気にあまやかになじむんですね。その余韻が耳に残って、ずーっときゅんとしていました。
すごく可愛らしい舞台だったなーという印象です。薮くんもかわいかったー。植草さんもー。