飛魚

中島裕翔くんのファンです

戸塚くんは美男子(熱海殺人事件の感想)

原作:つかこうへいさん、演出:錦織一清さんの舞台「熱海殺人事件」を見てきました。舞台に対する前知識がなく、ねたばれも読まずに行ったので衝撃がもうすごかったです。感じたこと、受け取りたいこと、考えたいこと、2時間の舞台が提供する情報量がとんでもなく多くて、終わったあと頭がふわああっとなってしまいました。
忘れたくなくて、終わったあと覚えているせりふをルーズリーフに書き出していったら裏表びっちり書いて3枚になり、手が疲れてしまったのでやめました。根性などない!!
とにかく戸塚くんがものすごく色っぽくてですね。水がたっぷりはいったたらいみたいに、少し触れたらそこらじゅうびしょびしょになってしまいそうな危うさがあって目が離せませんでした。本当にきれいな顔をしていますね。


正直まだ考えがまとまっていないのですが、以下ねたばれありの感想です。たたみます。

戸塚くんの演じる大山金太郎が狂人であるか、優しい男であるか、どちらかと聞かれればその両方を行ったり来たりしているように思います。愛ちゃんとふたりで海辺で、「うち、帰る」という愛ちゃんをひきとめる金太郎、愛ちゃんとの結婚生活を提案する金太郎、方言まるだしで話すその姿はまるで狂人のようでした。


私は人の、顔が担う社会的役割に対してものすごく興味があって、最近もそういった本*1を読んでいたので、愛ちゃんの顔の醜さについて刑事たちが指摘するところからぐいぐいと引き込まれていきました。
愛ちゃんはブス、ブサイク、多忙でスケジュールが空いていない顔のきれいな売春婦のため、チェンジされ時間をかせぐためだけに呼ばれる、誰にも犯されない売春婦。
山口愛子はブスだ、といわれるたび、金太郎は真っ赤になって怒ります。ブスって言うな!ブスって言うな!
東京にいた5年間、愛ちゃんのことを思わない日はなかった。
大関になった相撲大会で土俵際に追い詰められたとき、愛ちゃんがかけてくれた「金ちゃーん、がんばれー!」の声を忘れたことはなかった。
僕たちは孤独だったんです。5年間もの間、隣村で育った同郷の人としか親しくなれないほどに。
そういうせりふを言う、汗にぬれた戸塚くんは美しかったです。


刑事たちは、お前のような美男子がどうしてあんなブスを連れ歩いたんだ?売れないホストのように金がないから、やらせてくれる女が同郷のブスしかいなかったのか?いやこういう手合いはやらないんですよ、ゆとりだから。円周率をおよそ3にしてからおかしくなった。など見当違いなことで金太郎を責め立てます。
この、戸塚くんが美男子だっていう公式設定ほんとにたまらなかった!!美男子役!美男子だからこそできる役!!ああーほんっとうに顔が可愛かった!!
ほんとうに顔がかわいいのに目はぎらぎらと照明を反射し、舞台上にちらちらとふたつの火花を散らしていました。


構成上のクライマックスである、愛ちゃんと金太郎の海のシーンでは涙をこらえることが出来ませんでした。
狂気をにじませながら、自分がいかに愛ちゃんを好きでいたか、これから愛ちゃんとどういう生活をしていきたいか語る金太郎。
相手にしてられないとばかりに「うち、帰る」と何度も繰り返した言葉を告げる愛子に金太郎はお金をさし出し、「これがあれば、愛ちゃんなんでもしてくれるやろ?愛ちゃんひざまずいてくれるやろ?」といいます。「私が東京で何をしていたか知ってたの?」
はあ〜〜〜ここね〜〜〜2人の均衡というか、それまでの関係が一気に崩れる暴露ですよねえ…このときの戸塚くんがもう…きれいだった(そればっか)
美男子というだけでブスの愛ちゃんを傷つけるんですよ!困ったことがあると九州弁で笑ってごまかす、何かって言うと俺は職工ばいって卑屈になる金ちゃんは、だっさいロンドンブーツはいて東海道線の乗客にくすくす笑われても、酔っ払いに絡まれても、美男子なんですよ!!


愛ちゃんにお金を差し出してもう頑張らなくてもいいよと言い、その言葉に愛ちゃんが泣き崩れた瞬間、狂気が宿っていた瞳は優しさしか……という解釈をして戸塚くんの顔が見たかったのですが、私の目が涙で曇ってしまいそれは無理でした……泣いてた……涙止まらなかった〜
「いつもニコニコして、女手一人で私を育ててくれたお母さんが、全身がゆっくり動かなくなっていく病気にかかったの。だんだんあがらなくなる手で、開かなくなる口で、ごめんねって言うの。私が頑張らなかったら、妹たちはどうやって暮らしていくの!?お母さんはどうやって病院に行ったらいいの!?東京に行ってお金を稼ぐしかなかった。体を売ることなんてなんともなかったわ。」
金太郎の手をにぎりすがりつくように愛ちゃんは泣きます。金太郎はその告白のすべてを受け止め愛ちゃんに、故郷へ帰ろうと語りかけます。
「帰る前にこの金で顔を戻そう。今のままじゃ五島に帰っても、みんな愛ちゃんだってわからんばい。」
愛ちゃんは顔を整形していたのでした。


ここが、もう、配役が戸塚くんで納得、腑に落ちる、役が合っていると確信できるシーンでした。
顔の美しさに価値を見出さないところ。外見に頓着しない美男子。本人と重なりました。
男女間の、美しい顔が持つ価値の社会的相違。愛ちゃんはブスでした。女を求める男の元へと向かっても、チェンジチェンジで抱かれない。体を買ってもらえない。どれほどみじめな思いをしたことでしょうか。一方美男子の金太郎は油にまみれた職工服しか着た事がなく、ファッションなんてわからないといいます。それで不自由を感じることなく暮らしていけるのです。4万円から2万2千円の挨拶料を引いた、1万8千円をもらえるのです。
「俺はそのために金を稼いできた!これも!これも!これも!!」赤いジャージ(ださい)(すごください)のポケットからお札を出し、愛ちゃんの手に握らせる金太郎から愛ちゃんは離れます。
「目を二重にしたら人が3人振り向いたわ。鼻を高くしたら5人が抱いてくれた。顎や輪郭を変えるたびに指名が増えていった」
「抱きなさいよ!もう私はそんなはした金じゃ抱かれない女なんだけど。同郷のよしみで!!あんあん言ってあげるわよ!」
ふわあああああ
あ〜〜
もうここは男と女の埋まらない溝といいますか、外見のもつ社会的価値の解釈に圧倒的な差がある的な的な的な。
ブスの気持ちは顔がいい男にはわからねえよ。


個人的なクライマックス、錦織さん演じる木村伝兵衛に薔薇の花束で打擲される金太郎のまあ美しいこと、はいつくばる金太郎の顔の色っぽさ、山口愛子を殺したのは腰紐ではなく金太郎の美しさなのだと、赤い照明のもと舞い上がり舞い落ちる赤い薔薇の花びらを見て思いました。


金太郎が愛ちゃんを呼び出した喫茶店はマイアミという流行おくれの薄暗い店でした。なじみのカフェバーでも作っておけという熊田刑事に、カフェバーには出入り禁止を申し渡されていると金太郎はいいます。700円のコーヒーがまずかったから値切ったら、そうなったと。
「それでどうしたんだ」
「もう行かなければいいと思いました」
「カフェバーの前を通るだろう」
「にらみつけてやりました」
「何か言われなかったか」
「聞き流しました」
「気にならなかったのか?」
「自分は間違ってないと思いましたから」


ああ。
もうああ、としかいえません。
Myojo戸塚くんの一万字インタビューとか、色々なことがよぎってしまい。
戸塚くんの顔のきれいさばかり、浮かびます。


舞台を観終わったあともほぼ放心状態で、せっかくお友達の戸塚くん担さんが話しかけてくれたのに「戸塚くんってROOKIES好きなの?」って聞き忘れてしまいました。
通路側の席だったので見えたのですが、戸塚くんが登場時かぶっているAlohaって書いてある赤いキャップ、そのつばの内側に「ONE FOR O×ALL 大山」って書いてあったから。
Oの上にバツ書いて、Aに訂正してあるって、それROOKIESじゃん!!?
舞台の序盤に抱いた感想なんてふっとんでしまうくらい、衝撃の強い、たいへん消耗する舞台でありました。

*1:ジョナサン・コール「顔の科学」